ロサンゼルス国際空港(LAX)の空港内アクセスを担う自動無人輸送システム(Automated People Mover、略称APM)は、建設の最終工程を経て2026年1月に本格稼働する計画です。
運賃は無料で、利用者見込みは年間約3,000万人。このシステムの本格稼働により年間約4,200万マイル相当の自動車走行が削減される見通しで、渋滞緩和と環境負荷低減の効果が期待されています。
APMはターミナル群とレンタカー集中施設(ConRAC)、西側インターモーダル施設(West ITF)、そしてLAX/Metro Transit Center駅を結びます。なお、この新たな乗換駅は今年6月6日に先行開業しており、K線・C線および多数のバス路線と接続しています(APM稼働まではシャトルで各ターミナルと連絡)。五輪やW杯を見据え、空港と都市鉄道の結節機能が段階的に整備されている格好です。
不動産・賃貸市場への影響は?
第一に、空港アクセスの利便性が向上することで近接エリア(例:ウェストチェスター、イングルウッド、エルセグンド等)での短期滞在・空港勤務者向け賃貸ニーズが底上げされると考えられます。
過去の大規模インフラと同様、駅・乗換施設の直結性は「交通プレミアム」として賃料・売値を押し上げる傾向があります。たとえばロサンゼルスでは「鉄道アクセス良好」の訴求がある物件は平均で数%高く売れるとの調査結果があり、空港との連絡が強化されるLAX周辺にも類似の評価が広がる可能性が十分あります。大型交通期間やスタジアム投資の影響があったとされるイングルウッドでは、2014~2018年に住宅価格が63%上昇した事例もあります。
第二に、観光・ビジネス来訪者の動線がレールに乗ることで、ホテル・短期賃貸(中長期滞在)の稼働率とADR(客室平均単価)にプラスが見込まれます。APMは無料かつ高頻度の運行で、ターミナル移動のスケジュールを立てやすいことから、空港至近の宿泊需要を支えやすいと考えられます。2026年のW杯、2028年の五輪というイベント需要の前倒し取り込みにも資すものです。
第三に、生活者側のメリットとして、通勤・通学・出張の時間コスト縮減があります。LAX/Metro Transit Centerの開業で、APM稼働前でも鉄道+シャトルによるアクセスが実用段階に入りました。さらにAPMの稼働後は乗換がシームレス化し、空港勤務者や関連企業の通勤圏が広がります。雇用の集積に伴う住宅需要の層も厚みを増し、LAX東側~南側の賃貸市場に追い風が吹く可能性があります。
以上を総合すると、2025年の駅の先行開業と、2026年のAPM本稼働が需要の二段階の押上げを生み、賃貸・宿泊・小売いずれにも好影響をもたらす可能性が高いと言えます。

建設中のLAX自動運転新交通システム(2024年1月)