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過去10年でロサンゼルスの住宅価格はどれほど上昇したか

過去10年でロサンゼルス都市圏の住宅価格は大幅に上昇しています。

2013年頃に約44万ドルだったロサンゼルス郡の一戸建て住宅の中央値価格は、2023年末には約85万ドルへと倍近くになっています。具体的には、2013年が約43万9千ドル、2019年が約64万ドル、2021年が約82万6千ドル、そして2023年には約85万3千ドルと推移し、10年間で約94%上昇しました。特にパンデミック前後の2020~2021年にかけては約25%もの急騰を記録し、低金利や在宅勤務の広がりが郊外住宅需要を押し上げたとされています。2022年には一時的に3%程度の下落がありましたが、2023年には再び上昇へ転じました。ケースシラー住宅価格指数でも同様の傾向が見られ、2015年を100とした場合2025年時点で150超と、この10年で5割以上の上昇を示しています。

地域ごとの違い

エリアごとの違いを見ると、全体の傾向は上昇基調で一致するものの、上昇率や価格水準には差があります。西側・沿岸部の高所得エリア(サンタモニカ、ビバリーヒルズ、パシフィックパリセーズなど)は絶対価格が非常に高く、この10年でさらに高騰し、中央値が200万ドル超の地域も出ています。

一方、ダウンタウン周辺やサウス・ロサンゼルスなど比較的低価格だった地域も、再開発や新交通インフラ整備の進展で急激に上昇しました。たとえばスタジアム建設や鉄道整備が進んだイングルウッド市では、2014~2018年に住宅価格が63%も上昇し、市全体平均を大きく上回りました。郊外のインランドエリアでは上昇率がやや緩やかで、依然として中央値50万~60万ドル台の地域も残ります。また中低価格帯だった地域が急上昇した結果、ジェントリフィケーション(住民の入れ替わり)も進んでいます。さらにオレンジ郡では2013~2023年にかけて約92%、サンバーナーディノ郡では同期間に約154%と、低価格エリアほど割合で大幅上昇しているのも特徴です。

値上がり期待が重視される市場に

住宅価格の上昇に伴い、賃貸家賃も上昇しましたが、ペースは緩やかでした。HUDのFair Market Rent(FMR)によると、ロサンゼルス郡の2ベッドルームの月額家賃中央値は2013年の約1,421ドルから2023年には約2,222ドルへと上昇し、この10年間で約56%の増加にとどまりました。一方、同期間の住宅価格は倍近くに上昇しており、価格上昇率の方がはるかに大きかったことがわかります。

この結果、Price-to-Rent比(価格対家賃比率)は上昇傾向を示しています。具体的には、全国的な目安で「16~20を超えると賃貸優位」とされる中、ロサンゼルスでは2010年代半ば以降上昇を続け、2024年には26前後に達したと報告されています(cleverによる)。これは同じ家賃収入に対して不動産の価格が大きく膨らんでいることを意味し、投資家が得られるキャッシュフローの利回り(キャップレート)は低下してきました。

このように、ロサンゼルスの不動産市場はインカムゲイン(家賃収入)よりキャピタルゲイン(値上がり益)に依存する構造へと移行してきたと言えます。ただし2022年以降は金利上昇の影響により住宅価格の伸びは鈍化し、家賃の上昇ペースも落ち着きを見せています。ケース・シラー住宅価格指数では、2022年半ばに一部下落局面が見られましたが、その後は再び高止まりから緩やかな上昇へと転じており、大幅な下落には至っていません。

背景には、ロサンゼルス特有の慢性的な住宅供給不足による需要の底堅さがあります。このため、金利上昇による一時的な調整があっても、市場全体が崩れるリスクは低いと見られています。カリフォルニア不動産協会(C.A.R.)も、2025年に州全体で住宅価格が前年比約4.6%上昇するとの予測を発表しており、ロサンゼルス市場についても緩やかな上昇基調が続くと予想されています。

総合的に見ると、過去10年のロサンゼルス住宅市場は低金利環境と旺盛な需要に支えられて大幅に成長した一方、家賃の伸びが住宅価格に追いつかず、住宅費負担率の悪化という社会問題も顕在化しました。購入のハードルが非常に高くなり、Price-to-Rent倍率が高位にある現状では、賃貸の方が合理的な選択とされるケースも増えています。今後も供給不足が続く限り、価格の大幅下落は起こりにくく、全米平均を上回る上昇率や低下する利回りがロサンゼルス市場の特徴であり続けると考えられます。

参考
・”Median Home Sales Prices Southern California“, Los Angeles Almanac
・”Residential Appreciation Rates in Los Angeles Over Time“, GATSBY INVESTMENT
・”Los Angeles, CA Housing Market“, Zillow
・”Inglewood: A Case Study of Home Prices“, Coastline Realty Advisors
・”Fair Market Rents Residential Rental Properties Los Angeles County“,  Los Angeles Almanac
・”S&P CoreLogic Case-Shiller CA-Los Angeles Home Price Index“, FRED
・”Price-to-Rent Ratio: The Best U.S. Cities for Home Buyers and Renters (2024 Data)“, clever
・”Los Angeles Multifamily Market Report“, Kdder Mathews
・”US Home Prices Post First Annual Decline in 11 Years, Case-Shiller Shows“, Investopedia
・”Los Angeles Multifamily Investement“, Tolj Commercial Estate