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山火事で消失したマリブ海岸の土地、外国人投資家が6500万ドルで買収

By Foto: © JCS / Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0

2025年1月の山火事で、ロサンゼルス郡西部のマリブ市ではラコスタビーチやカーボンビーチを含む沿岸住宅地で甚大な被害が出ました。市の集計や地元の報道では焼失した建造物が720棟を超えたと伝えてられており、被災地は灰と瓦礫が点在する無残な景観となりました。

外国人投資家が6500万ドルでマリブの焼失地を買収

そうした中、ある外国人投資家が海に面した焼失地を相次いで取得たことが報じられています。具体的にはラコスタビーチで8区画、カーボンビーチで1区画の計9区画を、総額約6,500万ドルで買い集めたとのこと。さらにもう1区画は売買手続き(エスクロー)中とされ、取得面の動きは合計10区画規模に達する可能性があります。

この投資家は、海側の間口が約40フィート(約12メートル)以上ある区画を狙い、焼失前に著名人が保有していた海沿いの一等地も含めて取得しています。価格帯の例として、間口約90フィート(約27メートル)の最広区画が1,380万ドル、プール付きで約80フィート(約24メートル)の区画が1,280万ドルで成約しました。残る多くの区画も12〜19メートル程度の間口を持ち、再建後の流通価値をにらんだ獲得であることが読み取れます。仲介筋は再建・売却時に1戸あたり2,500万ドル超を狙えるとの見立てを示していますが、これは市場環境や建築コストに左右されるため、将来の価格を断定するものではありません。

実務上の最大の関門は許認可と考えられます。沿岸域の再建では、カリフォルニア沿岸委員会が関わる沿岸開発許可(CDP)を含む多層の審査が必要になり、マリブ市のガイダンスでは取得に12〜24カ月を要するケースが一般的だとされます。さらに、浄化槽は高度処理型の設置が求められるなど環境規制は厳格で、津波・高潮に配慮した基礎設計、耐洪水基準の充足、施工時期や資材搬入に関する条件も課されます。2018年のウールジー火災を受けた制度改定では、沿岸再建の申請手数料の引き上げなどコスト増要因も明確化されました。したがって、買収から起工までの“待ち時間”をどう資本計画に織り込むかが投資成否を分けることになります。

外国人投資家が6500万ドルでマリブの焼失地を買収

当初匿名とされた買主の素性を、その後の続報でニュージーランド出身の実業家兄弟と報じたニュースもあります。同兄弟が経営するグループ企業には建築テクノロジー企業を擁し、モジュール建築やプレハブ化による工期短縮・品質安定化を掲げています。(参考:TheRealDeal

もっとも、沿岸域の再建は技術だけでは進みません。設計審査や近隣の合意のほか、建築資材の高止まりや人手不足、海上輸送の遅延など、複数の不確実性が重なります。報道では土地取得だけで約6,500万ドル、総投資が1億ドル規模に達する構想が示されています。

マリブのオーシャンフロントは、供給が極端に限られる“位置の独占”資産です。焼失によって短期的には住宅在庫が減り、地価が軟化する局面もありましたが、希少性が毀損されたわけではありません。むしろ最新の耐火仕様と環境基準を満たす再建ストックへの更新は、長期的には沿岸資産の信用補完になります。投資家にとって重要なのは、①海側の間口と建築可能な延床の確定、②CDPに係る制約(高さ・セットバック・材料等)、③浄化槽や杭基礎の見積精度、④建設保険と災害保険の条件、⑤出口価格の実需確認、の五点です。以上を積み上げたうえで、取得の迅速さだけでなく“許認可ドリブンの工程管理”を主軸に据えた再建計画が、マリブ再生の実効性を左右すると考えられます。