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LA不動産投資の戦略比較 ~キャピタルゲイン重視 vs インカムゲイン重視~

不動産投資で利益を得る方法は大きく分けてキャピタルゲイン(売却益)とインカムゲイン(賃貸収入)の二つがあります。ロサンゼルスの不動産市場は歴史的に資産価値の上昇(キャピタルゲイン)に恵まれてきた反面、物件価格が高いため賃貸利回り(インカムゲイン)は全米平均より低めです。では、LAで不動産投資を行う際、どちらを重視すべきなのでしょうか。本記事ではエリア特性や税制面も含め、キャピタルゲイン重視戦略とインカムゲイン重視戦略の違いを比較します。

キャピタルゲイン重視の戦略とエリア選定

キャピタルゲイン重視は、物件の将来的な値上がり益を狙う戦略です。ロサンゼルスは人口増加や経済発展に伴い不動産価格が長期的に上昇してきた市場で、2018~2023年の5年間では住宅価格中央値が約46%も上昇し年平均9.2%の伸びを示しました。特に供給が限られる高級住宅地や再開発で生まれ変わるエリアは、今後も中長期で価値上昇が期待できます。

したがってキャピタルゲインを狙う投資家は、「需要に対して供給が少ないエリア」や「これから発展が見込めるエリア」に注目すると良いでしょう。 具体的には、サンタモニカやビバリーヒルズ、ウェストウッドといった伝統的高級住宅街は土地の希少性から長期的な値上がり傾向が続いています。またプレイアビスタなどの新興「シリコンビーチ」エリアもテック産業の集積により人気が高まり、将来的な資産価値向上が見込めます。再開発が進むダウンタウンやイングルウッドも中長期ではキャピタルゲイン狙いで投資する価値があるでしょう。

ただしキャピタルゲイン型の投資は短期的な賃料収支がマイナスになる可能性があります。ロサンゼルスの高額物件は表面利回りが低く、ローンを利用すると月々のキャッシュフローが赤字になることも珍しくありません。それでも将来の大幅な値上がりによってトータルで利益を得るとの見込みで保有し続ける戦略です。

また税制面では、物件売却時のキャピタルゲインに対して課税が行われますが、アメリカでは1年以上保有した資産の売却益は長期譲渡所得となり税率が0~20%(所得水準による)と優遇されています。短期転売(1年未満保有)だと最大37%の通常所得税率が適用されるため、キャピタルゲイン狙いでも最低1年以上の保有が推奨されます。また「1031エクスチェンジ(1031 Exchange、テンサーティワン交エクスチェンジ」と呼ばれる税制優遇策を使えば、売却益を他の不動産に乗り換えることで課税を繰り延べすることも可能です。これにより売却益を次の物件に再投資し、雪だるま式に資産を増やす戦略も考えられます。

インカムゲイン重視の戦略とエリア選定

インカムゲイン重視は、賃貸収入によるキャッシュフローを重視する戦略です。毎月の家賃から経費やローン返済を差し引いた手残り収入を安定して得ることが目的となります。

ロサンゼルスでは高級エリアの利回りは低いため、インカムゲインを重視する場合は比較的手頃な価格帯で利回りの良い物件を探す必要があります。具体的にはコリアタウンやダウンタウン近郊、バレー地区、サウスロサンゼルスの一部など、表面利回りが5~6%前後の地域がターゲットになるでしょう。

例えばイングルウッドやロングビーチ、バレー内の庶民的な街では、物件価格と賃料のバランスが取れておりキャッシュフローが出やすい傾向があります。こうしたエリアでは少し古い集合住宅を購入して適切にリノベーションし、安定収入を確保するという戦略が考えられます。

インカムゲイン型の投資のメリットは、市場の値動きに左右されず定常的な収益を得られる点です。仮に不動産市況が停滞しても家賃収入が得られていれば保有を続けやすく、長期で見れば借入金の返済も進みエクイティ(自己資本)が増えていきます。ロサンゼルスは賃貸需要が底堅く空室率が低位で推移しているため、物件選定さえ誤らなければ安定収入源となる可能性が高いです。

税制面では、賃貸収入は毎年所得税の課税対象となりますが、アメリカ税法では減価償却費(Depreciation)という強力な節税ツールがあります。住宅用不動産は27.5年にわたり減価償却計上できるため、建物部分の購入費用を毎年経費算入することで帳簿上の利益を圧縮できます。これにより現金収入は得ていても税引き後利益を低く抑え、所得税負担を軽減することが可能です。またローン金利や固定資産税、管理費等も必要経費として控除できるため、適切に経費計上すれば家賃収入に対する実質的な税負担率はそれほど高くならないでしょう。将来的に物件を売却する際には減価償却相当分について減価償却費償却(いわゆる減価償却の戻入=譲渡益課税)が課されますが、それでも長年にわたりキャッシュフローを享受できるメリットは大きいです。

戦略に応じた物件選びと留意点

キャピタルゲイン重視かインカムゲイン重視かによって、適した物件タイプも変わってきます。前者の場合、新築の高級コンドミニアムや将来性のある土地付き一戸建てに投資し、立地の将来性や希少性を優先する傾向があります。

後者の場合、複数ユニットから家賃収入を得られるアパートメント(集合住宅)やデュープレックス/フォープレックス(2~4戸一体の住宅)などが好まれ、利回りや収支計算が重視されます。

予算に応じては郊外の手頃な物件を複数持つことでリスク分散しつつ安定収入を確保する戦略も考えられます。ロサンゼルスでは近年ADU(Accessory Dwelling Unit:敷地内増築の離れ住宅)の規制緩和が進み、戸建物件の裏庭に賃貸ユニットを追加して収入を増やす手法も増えています。インカムゲイン重視の投資家にとっては、既存物件に付加価値をつけて家賃収入アップを図るこうしたアプローチも有効でしょう。

一方、キャピタルゲイン狙いの投資家はリノベーションや用途変更(たとえば民泊への転用等)による価値向上策で短期的に物件価値を高め、売却益を最大化するといった戦略も取り得ます。

最後に、個々の投資家の状況によって最適解は異なります。高所得の投資家であれば税優遇を活かした長期保有でインカムゲインを積み上げつつ、将来の売却でまとまったキャピタルゲインを得る二刀流も可能です。また、日本在住者が米国不動産に投資する場合、日本の税制下での取り扱いや為替リスクも考慮する必要があります。総じてロサンゼルス不動産は「キャピタルゲインのポテンシャルが高いがインカムゲインは控えめ」と言われます。したがって資産拡大フェーズでは将来有望なエリアに投資して値上がり益を狙い、リタイア後は安定収入物件に組み替える、といったライフステージに応じた戦略も選択肢となるでしょう。いずれにしても、現地マーケットの動向を注視しつつ、自身のリスク許容度と投資目標に合致した手法で取り組むことが成功への鍵となります。

※記事内で紹介した税金や税率は一例です。個人や地域によって変わる場合がありますので、詳しくは専門家にご確認ください。