ロサンゼルスの住宅市場は、全米の中でも特に供給不足が深刻なエリアとして知られています。特にアパート(日本でいうマンションタイプの集合住宅)の建設が需要に追いつかず、賃貸市場では慢性的な空室不足が続いています。
人口増加と世帯数の増加に対して新規建設が追いつかないため、借り手は限られた物件を奪い合う形となり、結果として家賃が押し上げられてきました。
アパート不足が家賃を高騰させる
この傾向はロサンゼルス郊外や近隣都市でも同様に見られますが、住宅不足が顕著なロサンゼルス市では、住宅建設許可件数が慢性的に目標に届いていません。
市が掲げる住宅供給計画に対して、実際の着工数は常に下回り、アパート供給は「慢性的赤字」とも言える状況にあります。これにより、入居希望者は限られた物件を奪い合う形となり、家賃の値上げ圧力は高まる一方です。これは以前ご紹介したアフォーダブルハウジング(低所得者向け住宅)の建設が進められる要因ともなっています。
カリフォルニア州の賃料上昇規制法(AB1482)では、家賃は毎年 最大5%+インフレ率(ただし合計10%まで)の値上げが認められており、多くの物件で年5〜9%程度の値上げが実施されています。そのため、実感としての家賃負担は上昇し続けているのが現状です。
ロサンゼルスでは、低所得層に限らず、中間所得層にとっても「手頃な賃貸アパートが見つからない」というのが日常的な課題になっているのです。
例えば、月2,500ドルのアパートに住む借主を想定してみましょう。もし家賃が毎年8%ずつ上昇すると、5年後には月3,673ドル、10年後には月5,366ドルにまで跳ね上がります。一方で、同じ時点で2,500ドル相当の住宅ローンを固定金利で組んでいた場合、10年後も毎月の返済額は変わりません。インフレが進む中で収入が上がれば、実質的な負担はむしろ軽くなることすらあります。こうした構造を理解すれば、賃貸よりも購入の方が合理的と考える投資家や居住者が増えるのは当然かもしれません。
ロサンゼルスのアパート不足は家賃高騰を加速させ、その影響は低所得層から中間層、さらには富裕層に至るまで広範囲に及んでいます。毎年の値上げが既定路線化する賃貸市場に対し、固定金利ローンによる購入は「支払いを固定化できる唯一の方法」であり、将来的な家計の安定を望む人にとって大きな魅力です。住宅不足という逆境の中で、購入がむしろ合理的な選択肢となっているのが現在のロサンゼルス不動産市場の実態なのです。