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2028年ロサンゼルス五輪で、早くも超高級短期賃貸に前倒し需要

LA28

五輪まで約3年とまだまだ先にもかかわらず、ロサンゼルスの超高級バケーションレンタル市場では、富裕層の前倒し予約が現実に動き始めています。

LA五輪を見越して富裕層が動く

大邸宅の長期貸切が成立した具体例として、ビバリーヒルズの物件で2028年1月から8月までの8カ月を月額30万ドルで契約し、総額240万ドルを前払いしたケースが報じられています。別の事例では、ハリウッドヒルズの6寝室・10浴室の邸宅が2028年7月の単月で約16万ドルで予約済みとのこと。こうした価格は平時の相場より40%以上高い設定が一般的で、問い合わせ件数は週5〜10件ペースまで伸びたとされます。専属シェフやバトラー、シアタールーム、屋外プールといった“ホテル以上の私的空間”への需要が、五輪という特需で一斉に顕在化しているわけです。

著名なアスリートやエンタメ関係者にとって、一般客と同じ動線になるホテル滞在はセキュリティ・プライバシー上のリスクを伴います。大邸宅ならば移動・会食・歓談のすべてを敷地内で完結でき、チームや家族単位での長期滞在に適します。供給サイドも、2023〜2024年の高金利やストライキ等で低調だった高級賃貸の再活性化を見込み、五輪特設ページの開設やコンシェルジュ強化など“受け皿”を整えてきました。結果として、通常は直前期に集中する大型イベント需要が、例外的に数年前倒しで契約化する現象が生じています。

規制には要注意

もっとも、規制の継ぎ目には注意が必要です。ビバリーヒルズ市は2025年9月5日施行の条例で短期賃貸(STR)を全面禁止し、原則12カ月以上の賃貸のみを認めました。ロサンゼルス市もホームシェアリング制度の下で、主たる居住地に限る登録制や年間120日上限などの枠組みを運用しており、無登録営業や違反事例への罰金強化を進めています。現時点で五輪に合わせた一律の特例は公表されていません。したがって、富裕層の需要が集中しやすい地域ほど、物件所在地の条例適合性と、貸出期間が“短期”に該当しない契約設計(たとえば長期の企業リースや滞在延長オプション)を精緻に詰める必要があります。

投資家・オーナーの実務上の懸念点としては、所在地の規制スタンスの確認、用途地域と占用人数・イベント利用の可否、セキュリティや人員配置・付帯サービスの委託契約、高額前金のエスクロー管理とキャンセル条項、損害保険・責任保険の特約がリスク管理の要諦となります。価格形成は需要一方通行に見えますが、供給はエリア限定で、違反取締りも並走します。広告表現やSNS発信が規制当局の監視対象となる点も踏まえ、法適合を担保した上での“ハイエンド・ホスピタリティ”として事業化することが、2028年特需の持続性を左右します。数字の派手さに目を奪われず、条例や保険、契約実務にも注視することが重要だと考えられます。